私は以前看護教員をしていました。学生に認知症のことを理解してもらうために様々な認知症の方が感じていることについて調べ(認知症の方のブログや書籍など)、授業に用いていた資料をもとに認知症の方から見える世界についてまとめてみたいと思います。
認知症高齢者の権利と人格擁護
• 私は私が生きてきた自分史や生活史があります。私の好む食べ物、趣味、思い出や人とか場所、私が好きなこと嫌いなことがらを理解してし
っかり私を見て支えてください。
• 私は私の意見や権利を主張することが難しくなっており、この主張を代弁してください。
• 私は認知症ですが、子供扱いなどしないで人格ある存在として受け止めてください。
• 私ができないことは何かを理解し、できないところを支援してください。
• 私は認知症ですが、何もできないのではないので、できることはさせてください。
認知症高齢者の虐待防止
• 私は私の中にある世界(内的世界)のことを話し、訳の分らないことを言ってしまいますが、怒鳴ったり馬鹿にしたり偏見を持った関わりをしな
いでください。
• 私は病気で今自分が言ったことや行ったことをすぐ忘れてしまいます。そのことで一番お世話になっている人を疑ってしまったりしますが、悪
気はありませんので、叩いたり怒鳴ったり叱ったりしないでください。
• 私は病気で整理整頓や衛生面のことがよく分らなくなっております。自分では一生懸命のつもりでもそのように受け止められない行為になって
いると思いますが、叱ったり怒らないでやさしく教えてください。
・ 私は怒鳴られたり叱られたり叩かれたりすると、その人を信じることが できなくなり、猜疑心が強くなり、いろいろな妄想をいだいてしまいます。もっと語り合って話す言葉の背景にあるわたしの気持ちや思いを理解してください。
成年後見制度や地域福祉権利擁護
• 私は認知症になっても、私の人生を最期まで私らしく生きたいと思っており、この願いを叶える手立てを考えてください。
• 私はお金の価値や計算が出来なくなってしまいましたが、私の財産は私が私らしく生きるために使えるようにしてください。
• 私は私が望む医療や介護サービスを利用したいと思います。私の意思を尊重してください。
• 私は訪問販売等の方が来ると分らず契約してしまったり、すぐにだまされてしまったりしますので、そんな私を支えてください。 私は私を理
解してくれる人がいつもそばにいて、相談にのってくれる人がいると安心して生活することができます。
認知症高齢者の内的世界
• 私は徘徊したりしますが、探し物や行かなければならないところや不安などの理由があって歩いておりますので、私を無理やり連れ戻したり、
そこから出られないようにしたりしないで、私の内的世界を理解してください。
• 私は「家に帰る」と言いますが、不安なことがあって安心のできる心のよりどころとなる家に帰ると言っていますので、「ここが家だよ」とか
「そんな家はないよ」とか連れ戻したりしないで、その不安が何か私の内的世界を理解してください。
コミュニケーション
• 私は多くのことを忘れてしまいますが、「気持ちよい」「心地よい」
「うれしい」「楽しい」という気持ちは残っているので、不快になるような言動はやめてください。
• 私は自分の気持ちを上手に伝えることができないので、表情や態度をよく見てください。そして察してください。
• 私はこれから自分がどうなってしまうのか不安と恐怖で一杯なので、時にはだまってそばにいてください。 励ましの言葉が辛くなる時があり
ます。
• 私が元気な頃、いつも行っていたところはたくさん覚えております。覚えていることを沢山話すことが楽しみです
・ 私は忘れてしまっていることを他人に知られたくないので、作り話をしてしまいます。でも嘘をつきたいわけではありません。
・ 私は上から見下されると恐怖感を感じます。同じ目線の高さで話をしてください。
・ あなたにさっき会ったことも忘れてしまいます。私に会うときはいつも笑顔と明るい態度で接してください。あなたがなぜ怒っているのか分り
ません。
・ 私は一人になりたい時もあるのです。でも無視されるのはいやです。「自分で選んだ、落ち着けるこの場所にいたい」という気持ちをわかって
ください。
・ 私は家族の顔も名前も、自分の年齢もわからなくなっています。「この人、だれ?」「何歳ですか」と聞かないでください。分からない自分が
悲しくなります。
わかりたいと思う気持ち
• 私は今、話したこと、聞いたことをすぐ忘れてしまいますので、何度も同じ事を聞き返したりします。「しつこい」と思わず、同じ事を何度で
も答えてください。
• 私はお話ができなくても歌うことができる場合があります。一緒に口ずさんでくれるととても楽しい気分になれます。
• 昔は、いつも近くの子供たちや動物がいました。昔のことは覚えているので懐かしい気持ちになることができます。
• 過去の世界が、突然よみがえってきます。その世界に付き合ってもらえるととても安心できます。否定されると自分の人生を否定されたようで
悲しくなります。
• 私は子供ではありません。幼児言葉を使われるといやな気持ちになります。ひとりの大人であることを忘れないでください。
• いつも一緒にいる人、顔なじみの人がいると安心できます。私たちにも好きな人、嫌いな人がいることを忘れないでください。
• 私にも人生の歴史があります。それをわかってくれると私たちの言動の意味がわかるかもしれません。
通じなくても言葉を大切に
• 私は難しい話はまとめることができません。簡単な言葉、短い文章で話してください。
• 私は聞きなれた呼び方をしてくれたほうがわかりやすいときがあります。私の歴史につき合ってください。
• 私は自分でも何を話しているのか分らなくなることがあります。じっくり聴いて欲しいのです。
• 私は耳が遠くてあなたの話が聞き取りにくい時があります。でも大声で話されると怒られているように感じてしまいます。耳元でやさしく話し
てください。
• 私は言葉だけだと分らないことが沢山あります。身振り手振りや時には手本をみせてください。
• 私はたとえ言葉の意味がわからなくても、通じなくても必ず「言葉」をかけてください。わたしたちはモノではありません。
• 私は沢山の音があると聞き分けられません。静かな場所を望みます。
居心地のよい環境づくり
• 私は環境が変わると、ここがどこなのか分からなくなります。皆さんが外国で迷子になったような気持ちと同じです。環境の変化に対応ができ
ないため、一緒にいる人がいなかったり、いつもと場所が違うと混乱します。できるだけ同じ場所で生活することを望みます。
• 私は直前の出来事はすぐに忘れてしまいますが、昔の記憶はよく覚えています。部屋に以前から使っていた物があると居心地が良くなります。
• 私は音にはとても敏感です。人々同士が呼び合う大きな声、騒々しさ、また車や機械音などに恐怖を感じます。できるだけ静かなところが良い
です。また癒し系の音楽は心地よくなります。
• 私の生活習慣は長い期間で身についたものです。毎日同じリズムの生活が送りたいです。
• 私は病気の進行によって、今まで理解していたことも分からなくなります。特に困ることがトイレの場所です。早い時期から目立つものをぶら
下げるとか、「便所・はばかり・かわや」等と私が理解しやすい言葉で表示します。夜間は必ず明るくしておきます。
なじみの関係づくり
• 私は知らない人の中に入っていくことが怖く、しり込みしてしまいます。でも知っている人や仲間がいるとほっとします。なじみの関係が楽です。また大勢の人より少ない人のほうが安心します。
• 私は友達と楽しく話をしていても、相手が何を話しているか分からなくなり急に怒り出してしまうことがあります。介護者は必ずそばにいて、
私たちが楽しく生活できる橋渡しをしてください。
• 私は施設でも家庭で生活するような空間や雰囲気があると安心します。
安心できるやさしい言葉がけ
• 私は介護者の介助方法が自分に危険かどうかの判断をします。私の気持ちを理解したやさしい言葉で話しかけてください。
• 私はコミュニケーションが取れなくても介護者のやさしい表情は分かります。
• 私は短い言葉ではっきり話しかけをしてくれると理解できることもあります。
• 私と話をするときは目の高さを同じくして、私の視野に入ることを望みます。
• 私はやさしい言葉と同様、スキンシップを好みます。
説得より納得
• 私には時々幻覚や妄想が見えますが、誰も信じてくれません。かえってむきになって怒ったり説得させようとしますが、私には不満しか残りま
せん。
• 理屈に合わなくても事実と違っても、私が納得できる話をして欲しいのです。
・ 私がおかしなことを話しても、否定せず受け入れてください。
できる能力の活用
• 私は記憶は忘れても身体を動かすことはできます。簡単な作業ならできることもあります。
• 私の生活歴の中でやっていたことは得意です。昔の趣味や活動をとりいれると、私も動きが活発になります。
• 私は毎日繰り返すことによって、忘れていた道具の使い方を思い出す場合があります。
健康管理
• 私は言葉で表現することができないため、自分の体調を訴えることができません。日頃から私の健康状態を把握し、バイタルチェックをするこ
とを望みます。
• 私は便意、尿意を感じると落ち着かなくなり、不機嫌になります。
• また機嫌の悪いときは便秘かどうか疑ってみてください。
食事の援助
• 私は食べることが大好きで、食事の時間はとても楽しみです。落ち着いた場所で、ゆったりとして食べることを望みます。
• 私の食欲がわかない時、体調はどうか、排便の状況、睡眠不足、義歯が合っているか等の原因を探ってみます。食前に食べ物を口にしたためお
腹が空いていない場合もあります。
• 私は目の前のお膳に、好きなものがないから食べないこともあります。私の食習慣を調べてみてください。
• 私は箸やスプーンが何の道具か分からず手で食べてしまうのです。おにぎりや一口大の大きさにして提供してもらえれば、手掴みで食べられる
し、こぼして迷惑をかけることも少なくなるはずです。
• 私は食べたことを忘れて何度も食事の催促をします。「今食べたばかりでしょう」と怒らず、飲み物を勧めたり興味ある話をしてください。
• また一日3食にこだわらず、量を減らして、4食6食にしてもらうのもいいかもしれません。
• 私は食べ物かどうかの判断ができず何でも口に入れてしまいます。そんな私の周囲を常に整理整頓しておいていただければ安心できます。
更衣の援助
• 私は暑いか寒いかが分からず何枚も重ね着をしてしまいます。身につける服だけ出しておいていただければ混乱しません。
• 私はかぶりの服は嫌いです。一瞬、目の前が暗くなり怖いのです。
• 私の更衣介助をするときは、言葉掛けと同時にその部分を触って誘導してください。
排泄の援助
• 私はトイレの場所が分からなくてうろうろします。そんな時は声をかけトイレに誘導してください。また、間に合わずに放尿したり、失禁をし
てしまいます。私の生活習慣などから排泄のタイミングやしぐさを知っていてくれると助かります。
• 失敗しても怒ったり叱ったりしないで下さい。私にも羞恥心はあります。
• 私は排便したことが分からず、もぞもぞしたり、気持ちが悪いから触っているのです。
• 臭さも感じなくなってきました。叱らずに拭いてください。
• 私はトイレの中の水が手洗い場に思えるのです。便をしたとき、そこで手を洗っているだけですので、ある程度の時間で声をかけてください。
まとめ
私たちは、より感情の世界に生き、認知の世界を生きることが少なくなっているので、記憶に残るのはあなたが何を言ったかではなく、どんなふうに話したか、ということだ。私たちには感情はわかるが、話の筋道はわからない。あなたの微笑み、あなたの笑い声、私たちにふれるあなたの手が、私たちに通じるものだ。
以下のような対応を試みて欲しい。
ゆったりした環境をつくる。
穏やかな、自信に満ちた、気さくな態度をとる。
その人の視野の内に入り、同じ目の高さで目を合わせたまま、名前を言う。
その人がいやがらない範囲内で身体にふれる。
簡単な言葉でゆっくりと、敬意をもって話す。
理解する時間を与える。
聞き上手になって、言葉がつかえてもじっと待ち、言葉の裏にある意味を察する。
あいまいな言い方を避け、短い文章を使う。
できれば写真などを使って、言っていることを具体的に説明する。
話について行くように努力し、言い問違いを直したり、不適切な返答を笑ったりしない。
よくできた時はほめる。
感情をむきだしにされても、あわてない。
少し長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございます。
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